みなさんこんにちは。
別姓訴訟を支える会事務局です。
1月16日の東京地裁第3回期日には、たくさんの応援ありがとうございました!
大法廷の傍聴席が半分以上埋まるほどの傍聴があり、原告、弁護団、支える会一同、大変励みになりました。
その後の報告会にも多くの支援者のご参加をいただき、お礼を申し上げます。
配信を見てくださった方もありがとうございました!!
今回の期日に向けて弁護団が提出した書面はこちらからご覧ください。
超大作です!!
https://bessei.net/3rd_trial/
報告会の様子はこちらからご覧ください。
(のちほど編集したものをアップする予定です)
https://youtube.com/live/8DJypVRQrrQ?feature=share
実は東京期日の前週、選択的夫婦別姓訴訟の一部を構成する、「確認訴訟」に引き続く家裁審判に動きがありました。
想田和弘さんと柏木規与子さんが、2022年7月4日に行った報告的婚姻届の受理を求める不服申し立てについて、東京家庭裁判所は2025年1月10日に審判を下し、申立てを却下しました。
これを受け、弁護団は1月16日の10時から東京・霞が関の司法記者クラブにて急きょ記者会見を開催しました。
今号ではそのご報告をいたします。
■ 確認訴訟に続く家裁審判について ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・・
1 事案の概要
想田和弘さんと柏木規与子さんは、平成9年、アメリカ合衆国ニューヨーク州において、ニューヨーク州家事関係法に定める婚姻の方式に従って婚姻を挙行しました(以下「本件婚姻」)。
もっとも、その際、「夫婦が称する氏」は定めていません。
お二人は、婚姻したことを国に報告するため、戸籍法41条1項に基づき、令和4年6月13日、「夫婦が称する氏」を定めないまま婚姻証書等を千代田区に提出しました(以下「本件届出」)。
これに対し、千代田区長は、本件届出は民法750条及び戸籍法74条1号に反するとして受理しませんでした(以下「本件不受理処分」)。
お二人は、令和4年7月4日、戸籍法122条に基づき、本件不受理処分に対する不服申立として、「千代田区長は本件届出を受理せよ」との審判を求めて東京家庭裁判所に申立をしました(以下「本件申立」)。
2 審判の概要
東京家庭裁判所は、令和7年1月10日付で審判をし、本件申立を却下しました。
お二人の婚姻が有効に成立していることは令和3年4月21日付東京地裁判決(判時2521-87)が認めていましたが、本件審判においても、本件婚姻が有効に成立していることを明確に認めました。
他方、本件審判は、「夫婦が称する氏」を定めていない本件届出を受理しないことは不当とはいえないと判断しました。
3 婚姻の成否
婚姻が成立するには、成立要件(=形式的成立要件+実質的成立要件)を全て充足することが必要です。
法の適用に関する通則法(以下「通則法」)24条2項は、婚姻の方式(=婚姻の形式的成立要件)は「婚姻挙行地の法による」と定めていますので、ニューヨーク州家事関係法に定める婚姻の方式に従って挙行された本件婚姻は、婚姻の形式的成立要件を充足しています。
この点は争いがありませんでした。
他方、通則法24条1項は、婚姻の成立(=形式的成立要件+実質的成立要件)は、「各当事者につき、その本国法による」と定めていますので、本件婚姻の実質的成立要件については、(同条2項が適用される婚姻の形式的成立要件とは異なり)民法が適用されます。
民法は、実質的成立要件として、婚姻禁止事由(731~736条)を定めるとともに、742条1号において、婚姻意思が必要であると定めています。
本件婚姻に民法731~736条が定める婚姻禁止事由がないことについて争いはありませんでしたが、千代田区長は、婚姻意思には「夫婦が称する氏」を定めることが含まれている(含まれないとしても、「夫婦が称する氏」を定めることそれ自体が婚姻の実質的成立要件の一つである)と強く主張していました。
本件審判は、「実質的婚姻意思とは、当事者間に真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思のことをいう…ところ、本件婚姻当時、実質的婚姻意思を有していたものと認めるのが相当である」と判示し、また、民法750条は「夫婦が称する氏」について合意することを実質的成立要件とするものではないと判断し、本件婚姻が有効に成立していることを改めて明らかにしました。
4 本件届出受理の可否
本件審判は、「民法は、婚姻の効力として、夫又は妻の氏を称するという効力…が発生するものとしており(民法750条)、同規定に基づき、戸籍法により、夫婦が称する氏の届出をし(同法74条1号)、一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに戸籍が編製される(同法6条)ことが予定されている」から、「外国の方式に従って婚姻した日本人夫婦においても、婚姻の効力として同氏の効力が生じ、婚姻の届出に際しては、夫又は妻の氏のいずれかを『夫婦が称する氏』として届け出る義務を負う」と判示しました。
残念ながら、本件審判は、本件申立が提起した重大な問題に背を向けてしまいました。
これまでも、別姓海外婚した日本人夫婦が「夫婦が称する氏」を合意すれば、戸籍に婚姻関係が登録されてきましたが、「夫婦が称する氏」を合意できない場合に戸籍に婚姻関係が登録されてこなかったという重大な問題については何の検討もしませんでした。
本件審判によれば、「夫婦が称する氏」を合意できない限り、婚姻関係は戸籍に登録されませんが、「夫婦が称する氏」の合意を強制することなどできるはずがありません。
別姓海外婚後、事故等で「夫婦が称する氏」を合意できくなった場合は、そもそも「夫婦が称する氏」を合意できる可能性がありません。
戸籍は、日本人「の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録公証する」 制度ですので、有効に成立した婚姻関係はすべて登録される必要があります。
本件審判は、戸籍の意義が損なわれることを許容しようとするものです。
女性差別撤廃条約16条2項は、「公の登録所への婚姻の登録を義務付けるためのすべての必要な措置(立法を含む。)がとられなければならない」と定めています。
戸籍以外に婚姻関係を登録公証する制度はありませんので、本件審判は、女性差別撤廃条約を遵守することにも背を向けています。
なお、夫婦が同じ戸籍に入らない場合がありうることは民法も想定しています。
例えば、Aが、Bの氏を称すると定めてBと婚姻した後、Bと離婚してCと再婚し、Cの氏を称していたものの、Bとの離婚が無効であった場合、A及びBは夫婦ですが、両名の氏は異なります(AはCの氏を称し、BはBの氏を称しています)。
この場合、A及びBは夫婦ですが、BはCを筆頭者とする戸籍に入っていますので、AとBは異なる戸籍に入っています。
戸籍は、日本人の身分関係について漏れなく登録するために工夫が重ねられてきましたので、本件婚姻についても戸籍に登録するための工夫を裁判所は検討すべき立場にあったはずです。
5 今後の対応等
本件審判については、不服申立(即時抗告)をして東京高等裁判所の判断を仰ぎます。
本件審判によって、「夫婦が称する氏」を定めないまま外国の方式に従って婚姻を挙行しても有効に婚姻が成立することが一層明確になりました。
国は、このことを正面から認め、「夫婦が称する氏」を定めていない日本人夫婦の婚姻関係について戸籍に記載する措置を速やかに講じる責務を負っていると思います。
弁護士 竹下博將
※審判書及び関連報道はこちらから
https://bessei.net/20250110-media/
■ 札幌地裁・第2回期日のご案内 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・・
日時:2025年1月31日(金)10時30分~11時(予定)
場所:札幌地方裁判所 805号法廷(大法廷)
☆10時頃より傍聴券が配布される予定ですので、お早めにお越しください。
☆10時15分より原告が沿道を行進して裁判所に入廷します。
傍聴券を入手後、すぐに沿道に移動して応援をお願いします!
その後改めて裁判所にお入りください。
☆期日終了後、期日報告会を行います。
裁判所から道路をはさんですぐ近くですので、傍聴後ぜひお越しください。
時間:11時30分~12時30分
場所:北海道高等学校教職員センター4階 大会議室
(札幌市中央区大通西12丁目)
ライブ配信はこちらです!
https://youtube.com/live/AwvL01LmWPI?feature=share
■ 東京地裁・第4回期日のご案内 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・・
日時:2025年5月15日(木)11時~
場所:東京地方裁判所 103号法廷(大法廷)
■ 支える会の連載公開中━━━━━━━━━━━━━━・・・・・・
別姓訴訟を支える会では、「全国保険医団体連合会」という、主に医師向けの業界紙に連載を持っています。
原則、会員のみの限定公開なのですが、現在、連載部分を公開してくれていますので、ぜひご覧ください!!
■ クラウドファンディングに引き続きご協力ください!! ━━━━━━━━━━・・・・・・
「夫婦別姓も選べる社会へ!訴訟」を支援するクラウドファンディングはおかげさまでファーストゴールを達成しました!
とはいえ、長い裁判期間、報告会の配信を継続し、イベント実施なども考え、セカンドゴールを設定することになりました。
引き続きご協力いただければ幸いです。
訴訟中はいつでもご寄付いただけますので、よろしくお願いいたします。
https://www.call4.jp/info.php?type=items&id=I0000131