選択的夫婦別姓に関する国会答弁

2021年6月現在、選択的夫婦別姓への民法改正法案は国会に上程されてはいませんが、選択的夫婦別姓をめぐって多くの議員が色々な議論を委員会で行い、国の見解を引き出し担当大臣や所管省庁の見解を質(ただ)しています。2021年の第204回国会から、選択的夫婦別姓に関する質疑応答をまとめました。選択的夫婦別姓について、所管官庁がどのように考えているかが分かります。

2017年の内閣府世論調査では「夫婦の名字(姓)が違うと、夫婦の間の子どもに何か影響が出てくると思うか聞いたところ、『子どもにとって好ましくない影響があると思う』と答えた者の割合が62.6%、『子どもに影響はないと思う』と答えた者の割合が32.4%」となっていますが、子どもへの影響はどう考えられているのでしょう?

2021年3月17日 衆議院法務委員会

衆議院インターネット審議中継

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質問:井出庸生議員(自由民主党/無所属の会)

里親里子家庭では里子は元々の氏を名乗ることが多く、親子別姓になるが、どうか。

答弁:厚労省 子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室きしもと室長

里親養育指針では子どもの氏・名前はその子どものかけがえのないものであることを示すと共に、(子どもが生来の姓を使うか養い親と同じ姓を通称使用するかについては)里親の氏を通称として使用する場合には、子どもの利益、子ども自身の意思、実親の意向の尊重や背景などの観点から個別に慎重に検討する。

質問:井出議員

子どもが生来の姓を使う場合養い親と別姓になるが、里親家庭という家族の一体感を求める制度と里親里子の氏が違うこととは両立するのか。

答弁:厚労省 子ども家庭局きしもと室長

里親制度の里親家庭における温かい雰囲気を大切にする趣旨と、里親と里子の氏が異なることは両立する。

解説

内閣府世論調査の子どもにとってよくない影響があると考える人が62.6%(2017年調査)ですが、この数字はどこから来ているのでしょうか。現在既に姓の異なる夫婦は国際結婚でも事実婚でも通称使用によっても存在しています。こうした中で姓の異なる夫婦のもとで育つ多くの子どもたちに、よくない影響があると考える人が過半数を超していることをどう考えればいいのでしょう。
個人的には、国はこれに対して放置するのでなく、別姓夫婦の子どもへの悪影響と考えられているものが何なのかを確認し、そしてもし悪影響と考えられていることが具体的になるならば、その解消のために何ができるのか対策を考えるべきであって、子どもによくない影響があると考える人が過半数である事をもって選択的夫婦別姓を前進させない理由にすることはおかしいと思います。また、漠然とした不安を問う質問を漫然と世論調査にいれ続けることにも疑問を持ちます。

夫婦同氏を義務化している国は日本以外にありますか?

2018年3月20日(火曜日)衆議院法務委員会

質問:國重徹(公明党)

夫婦同氏を義務化している国は日本以外に存在するか。

答弁:法務省 小野瀬民事局長

法務省が把握している限りでは、現在、婚姻後に夫婦のいずれかの氏を選択しなければならない夫婦同氏制を採用している国は、我が国以外には存在しない。

夫婦同姓の制度は日本の伝統でしょうか

2021年4月2日衆議院法務委員会

衆議院インターネット審議中継

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質問:武井俊輔議員(自民党/無所属の会)

夫婦同姓制度の歴史は。

答弁:国立国会図書館 きはら調査員

1870年(明治3年)に出された太政官布告により国民一般に名字の公称が許されるようになり、その後1875年(明治8年)に出された太政官布告により国民全員が苗字を持つようになった。夫婦の氏に関しては1876年(明治9年)の太政官指令で女性は結婚しても所生の氏を用いること、ただし、夫の家を相続した場合は、夫の氏を名乗ることとされたが、その後1898年(明治31年)に施行された民法により夫婦同姓制度が始まった。

解説

ここに歴史が述べられているように、明治時代日本人が皆姓を持つようになった当初は「夫婦別氏原則」だったのが、1898年(明治31年)夫婦同氏になりました。第二次大戦後民法が改正され、家制度は廃止され一組の夫婦と氏を同じくする子を単位として戸籍を編纂するという形が採用され夫婦同氏は引き続き踏襲されました。(参考:法務省HP 選択的夫婦別氏制度について)。このように、夫婦が同氏という制度は1898年から今まで120年ほどの制度です。

夫婦別氏推進論は戸籍廃止論なのですか?

2021年4月2日衆議院法務委員会

衆議院インターネット審議中継

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質問:武井俊輔議員(自民党/無所属の会)

選択的夫婦別姓と戸籍制度の両立が可能かどうか。

答弁:法務省 小出民事局長

戸籍は日本国民の親族的身分関係を登録、公証する唯一の公法で、仮に夫婦別氏制度が導入された場合でもその意義が失われるものではない。平成8年(1996年)民事行政審議会の答申で選択的夫婦別姓制度での別氏夫婦とその子は同一の戸籍に在籍するとされていることから戸籍制度との両立が可能だ。

2021年4月9日 衆議院法務委員会

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質問:高井崇志議員(国民民主党)

選択的夫婦別姓制度導入で戸籍がどうなるか。

答弁:法務大臣 上川陽子

戸籍は日本国民の親族的身分関係を登録、公証する唯一の公法で、仮に夫婦別氏制度が導入された場合でもその機能、また重要性は変わらない。

解説

選択的夫婦別姓にするためには戸籍制度を廃止しなければいけないことはなく、上の答弁のように戸籍制度と選択的夫婦別姓を両立させることは可能と法務省も認めています。

夫婦親子別氏で家族単位の社会制度は崩壊するのでしょうか

2021年4月2日衆議院法務委員会

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質問: 武井俊輔議員(自民党/無所属の会)

家族のきずなが壊れるという主張に私は非常に強い違和感を持つ。人は誰でも自分や家族の幸せを願って一生懸命生きている。家族の形、幸せの形は多様であって、それを政治が何たるか言うのは、不遜の極みだ。憲法で言う公共の福祉に反しない範囲で、それぞれの幸せを願うことを最大限認め、阻害しないのが政治や行政のあるべき形だ。大臣の見解を聞きたい。

答弁:法務大臣 上川陽子

家族の在り方は、国民一人一人、その生き方と深く関わる事柄で、家族に対する思いも人によって違う。どのような家族観かにかかわらず、それを尊重することができる社会というのが極めて大事だ。国民的な議論を踏まえて意見の集約を図ることが望ましい。法務省としてもできる限りの情報提供をしていきたい。

解説

上川大臣も認めるように、家族のあり方は一人ひとりの生き方と深く関わり、家族に対する思いも人それぞれで、夫婦の姓について言えば、同姓が絆だと思う人も、姓の同じか別かは絆と関係ないと思う人もいます。それぞれの幸せを求める思いを尊重する社会を目指してほしいというのは第2次別姓訴訟に関わっている皆の思いでもあります。

通称使用で不利益は解消するのでしょうか?

2021年4月2日衆議院法務委員会

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質問:高井崇志議員(国民民主党)

研究者にとって旧姓の通称使用が海外で理解されにくいことなどあるが、旧姓使用を推奨することには弊害があるのでは。

答弁:法務大臣 上川陽子

旧姓の通称使用では戸籍姓との使い分けが必要となり、旧姓の通称使用の拡大によって社会生活上の不利益の全てが解消されていると言い切れない。

解説

第一次別姓訴訟の判決では「通称使用が広まることにより一定程度不利益は緩和され得る」として、通称使用で不利益が緩和されることは違憲にならないという一つの論拠にあげられました。
けれども「すべてが解消されていると言えない」「一定程度緩和される」以外の不利益を負い、毎日の生活でいろいろな余分の書類仕事を課される(それには時間や手間に経費もかかります)のは改姓した夫婦の一方です。簡単に「ある程度解消されているから残りの不利益は負え」と済まされていいとは思えません。
5年ごとに行われてきた内閣府の選択的夫婦別氏制度に関する世論調査(最新では2017年では選択肢に、「夫婦は同姓であるべき」、「別姓が名乗れるよう法改正をしてもいい」の他に「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない」というものがあります。
ここで言われる「どこでも使える通称」というものが不可能なものであること、カードや口座、登記など使えないことも多く、現在も多くの職場で職名にすら使えない他、パスポートの旧姓併記では外国で正式な氏名と見做されないことがあることは外務省でも注意喚起しているように外国で使うことは不可能であることは問題になっています。これらに言及しないまま、「どこでも使える」と誤解を招く表現で質問されることは世論調査の正確性に関わります。

選択的夫婦別姓に関して国はどのような姿勢ですか?

2021年1月20日衆議院本会議

衆議院インターネット審議中継

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質問:立憲民主党代表 枝野幸男議員

(野党は皆賛成である選択的夫婦別姓について)党議拘束を外して採決しないか。

答弁:内閣総理大臣 菅義偉

我が国の家族のあり方に関わる事柄であり、国民の間にも様々な意見がある。引き続き、男女共同参画基本計画に基づいて、国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら検討を進める。

2021年1月22日参議院本会議

参議院インターネット審議中継

参議院HPに遷移した後、「再生マーク」をクリックして頂けますと、質問者のビデオを視聴することができます。

質問:立憲民主党の田名部匡代議員

選択的夫婦別姓の導入についてインターネット調査で過半数が賛成であるが、選択肢を増やすことについて総理ご自身が賛成か反対か。

答弁:内閣総理大臣 菅義偉

我が国の家族のあり方に関わる事柄であり、国民の間にも様々な意見がある。引き続き、男女共同参画基本計画に基づいて、国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら検討を進める。

2021年2月15日衆院予算委員会

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質問:大河原雅子議員(立憲民主党)

旧姓使用には問題があり選択的夫婦別姓の導入を求める

答弁:上川陽子法務大臣

我が国の家族のあり方に関わる事柄であり、国民の間にも様々な意見がある。他方で社会情勢に十分配慮する必要がある。夫婦別氏を認めず婚姻届を受理しないのは憲法に違反すると訴えた3件の家事審判の特別抗告審が出ておりこれから大いに議論していく。

解説

どのように聞かれても「我が国の家族のあり方に関わる事柄であり、国民の間にも様々な意見が・・・」と答えるのは前政権以来繰り返される光景。ここに「引き続き、男女共同参画基本計画に基づいて、国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら検討・・・」と、2020年暮れに反対意見を入れ当初案から相当後退し「選択的夫婦別姓」という語すら削除され決定した第5次男女共同参画基本計画に基づいて今後の動きを策定するという、行く手に暗雲立ちこめるような選択的夫婦別姓の未来像です。
裁判への最高裁の判断も見て、ともいわれますが、すでに2015年第一次別姓訴訟の最高裁判決で「この制度のあり方は国会で論ぜられ、判断されるべき事項に他ならない」と、国会に投げられていることは全く無視されています。
こうして司法と国会とで山羊さん郵便のように行き来していることを、議論をしているとは言わないと思います。

国は選択的夫婦別姓に関してどのように「検討を進める」のでしょうか?

2021年3月17日 衆議院法務委員会

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質問:井出庸生議(自由民主党/無所属の会)

第5次男女共同参画計画では更に検討を進めると書かれている。法務省が一貫して取り組んできた選択的夫婦別姓の検討を更に進めるこれまでの20年間とは少し異なる決意を見せてほしい。

答弁:小出法務省民事局長

これまで、ホームページに選択的夫婦別氏制度という項目を設け、制度の概要、法制審議会答申、世論調査の結果などについて、国民的な議論に資するよう周知してきたものであり、引き続き周知、広報を継続して、環境整備に努めたい。

解説:

2021年2月、地方議会自民党議員に向けて選択的夫婦別姓の審議を国会に求める意見書の地方議会での採択に反対するよう求める親書が50名の自民党国会議員連名で送られました。そこには反対理由がいくつか述べられていましたが、上の国会答弁に見られる国の姿勢からすると国会議員の中でも誤解、曲解、誤認識があるように見えました。
戸籍との関係や通称使用の代替性、別姓家庭のこどもの問題など、国民も混乱し疑問を持っているところかと思います。
5年ごとになされてきた内閣府の世論調査には通称使用や子どもの問題についての質問が入っていますが、これらの疑問や誤解に説明ないまま質問された世論調査結果ではバイアスがかかることが予想されます。
せっかく法務省も「できる限りの情報提供をしていきたい」と意気込んでいるのですから、HPでも上述のような国の姿勢を明らかにし、問題にももっと切り込んでいってほしいものと思いますが、私たちのこの国会答弁の紹介の試みが少しでも誤認識解消に役立てば幸いです。

第204回国会での選択的夫婦別姓賛成の立場からの質疑一覧(2021年1月20日から5月11日分)

1月20日衆・本会議 枝野幸男議員 (立憲民主党)
1月22日参・本会議 田名部匡代議員((立憲民主党)
2月15日衆・予算 大河原雅子議員 (立憲民主党)
2月24日衆・内閣 大河原雅子議員 (立憲民主党)
2月24日衆・内閣 足立康史議員 (日本維新の会)と高井崇志議員 (国民民主党)
3月02日衆・予算 辻元清美議員 (立憲民主党)
3月03日参・予算 福島みずほ議員 (社民党)と真山勇一議員 (立憲民主党)
3月03日参・予算 森まさこ議員 (自民党)
3月04日参・予算 田村智子議員 (共産党)
3月10日衆・外務 鈴木貴子議員 (自民党)
3月10日衆・内閣 森山浩行議員(立憲民主党)と玄葉光一郎議員 (立憲民主党)
3月10日衆・法務 池田真紀議員(立憲民主党)と串田誠一議員(日本維新の会)と高井崇志議員(国民民主党)
3月11日参・予算 矢田わか子議員 (国民民主党)
3月12日衆・法務 高井崇志議員 (国民民主党)
3月12日参・予算 三宅宅伸吾議員(自民党)と打越さく良議員(立憲民主党)
3月10日衆・文科 寺田学議員(立憲民主党)
3月16日参・内閣 塩村あやか議員 (立憲民主党)と杉尾秀哉議員(立憲民主党)と矢田わか子議員 (国民民主党)
3月16日参・法務 真山勇一議員 (立憲民主党)
3月17日衆・法務 宮崎政久議員 (自民党)と井出庸生議(自民党 )
3月22日23日参・法務、特別委員会で髙良鉄美議員(沖縄の風)
3月22日参・財政金融 音喜多駿議員(日本維新の会)
3月24日衆・法務 高井崇志議員(国民民主党)
3月25日参・総務 芳賀道也議員(無所属)
3月26日参・本会議 宮沢由佳議員(立憲民主党)
3月30日参・法務 森まさこ議員(自民党) と伊藤孝江議員(公明党) と髙良鉄美議員(沖縄の風)
4月1日衆・内閣 高井崇志議員(国民民主党 )
4月2日衆・法務 武井俊輔議員(自民党)と串田誠一議員(日本維新の会)と高井崇志議員(国民民主党)
4月6日参・法務 髙良鉄美議員(沖縄の風)
4月9日衆・法務 高井崇志議員(国民民主党)
4月12日参・決算 井上哲士議員(共産党)
4月16日衆・法務 稲田朋美議員(自民党)
4月22日参・厚生労働委員会 自見はなこ議員(自民党)
4月27日衆・法務 髙良鉄美議員(沖縄の風)
4月28日衆・外務 小熊慎司議員(立憲民主党)
5月11日参・法務 髙良鉄美議員(沖縄の風)

【参考】
1) mネット・民法改正情報ネットワーク mネット通信 434号〜447号
2) 衆議院 インターネット審議中継
3) 参議院 インターネット審議中継
4) 法務省 選択的夫婦別氏制度について