みなさんこんにちは。
別姓訴訟を支える会事務局です。
6月の国会での成立を待ち望んでいた選択的夫婦別姓に関する法案は、継続審議となりましたね。
衆議院法務委員会では6月17日、寺原弁護団長が参考人として招致され、素晴らしい陳述をされました。
他の当事者の意見陳述も胸に迫るものがありました。
ようやく当事者が国会の場で、法改正の必要性を訴える機会ができたことは前進かと思います。
参議院選挙をはさみ、秋の臨時国会での審議に期待しつつ、私たちも粛々と「違憲」判決を目指して頑張ります。
さて、6月11日は札幌地裁での第3回期日がありました。
前日までの雨の予報はどこへやら、晴天となり、爽やかな札幌でした。
入廷行動にはたくさんの支援者とメディアが詰めかけ、傍聴席はほぼ満席。
東京に負けない熱量がお天気にも影響したのでしょう!
大変好評をいただいたメルマガ第119号、第120号で、暴れ馬・野口弁護士を乗りこなす「ロデオ」として登場した三浦弁護士より、当日の様子やロデオの心情を報告いたします。
■ 札幌地裁・第3回期日のご報告【前編】 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・・
こんにちは、弁護士の三浦です。
6月11日に札幌地裁で第三次選択的夫婦別姓訴訟の期日がありました。
期日に足を運んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。
次回の札幌の期日は10月1日(水)午前11時からです。ご都合がつく方は是非、期日の傍聴にいらしてください。
期日から少し時間が経ってしまいましたが、今回のメルマガでは、期日までに国側からどのような書面が提出されたのか、期日ではどのようなやり取りがあったのか、今後の主張の予定について、2回に分けてご紹介しようと思います。
◆国側からの提出書面
国側からは5月30日付で反論書面(準備書面(1))が提出されています。内容は東京地裁の準備書面(3)と同じものです。
憲法上の論点は色々ありますが、国側からの反論を一言でまとめれば「この議論はもう終わったものだ」というものです。
これまで夫婦別姓に関しては第一次訴訟、第二次訴訟と繰り返し争われていて、最高裁が平成27年に大法廷判決で、令和3年に大法廷決定でいずれも「合憲」と判断しました。
「既に最高裁によって合憲と判断がされている。そして、最高裁の合憲判断が出た後の事情を検討しても判断を変更すべき事情はないから、依然として合憲である。」
というのが国側のスタンスです。
しかし、このような国側のスタンスは、これまでの判例の判断方法に照らしても間違っています。
過去にも、合憲とされていたものが後になって違憲と判断される例はいくつかありますが(婚外子相続分違憲決定や特例法違憲決定など)、判断を覆すときも、合憲判断をした後の事情だけが考慮されているのではなく、あくまでも当該法律が制定されたときから社会がどのように変化しているのかが吟味されています。
合憲判断の後に何か特別な事情がないといけないのではなく、些細なことでもそれが最後のきっかけ(the last straw)となれば違憲になるというのが最高裁の考え方です。
このように、国側の書面は、前提のスタンスが誤っているため、全体として説得力が低いものになっています。
◆期日の戦略
その他にも被告の書面には色々と問題があるのですが、次に検討する必要があるのが期日において、裁判官相手にどのような対応をするかという点でした。
これまでのメルマガでもご紹介していたように、札幌の守山修生裁判長は、法廷で主張の要旨を口頭で陳述するのを認めなかったり、原告からの意見陳述の機会も認めなかったりといった「塩」対応をみせていたからです。
しかし、一方で、初回の期日で守山裁判長は、こちらに対して「憲法の解釈が変わったという主張はするのか」と憲法主張の構成について確認したり、本人の尋問については必要だと考えているという考えを示したりと、審理自体に消極的とも思えませんでした。
もしかすると、守山裁判長は、審理の進行については厳格でややクセはあるものの、具体的な憲法論について口頭で議論するのは好きな人かもしれない、そうだとすれば法廷で憲法論について方針や疑問を投げかければ、守山裁判長が考えていること、問題意識を引き出せるかもしれない──。
そのような見立てから、今回の期日では、これまでの方針を改め、意見陳述を求めたりはせず、むしろ予告なしで憲法論について守山裁判長と議論をしてみようと考えていました。
◆期日の始まり(何かが起きる予感)
いざ期日が始まると、期日間の提出書面の内容を確認した後、守山裁判長から「裁判所から被告に確認したい点がありますが、先に原告からは何か確認事項はありますか?」と投げかけられました。
裁判所が「被告に対して確認したい点がある」というのは、非常に良い感触です。
少なくとも、裁判所としては既に合憲と判断が出ているから、双方がどんな主張をしても関係がないとは考えていないということです。
裁判所が確認したい点からは、裁判所が何に関心を持っているのかを窺い知ることもできます。
ニヤニヤしそうになりましたが、守山裁判長から水を向けられたので、まずはこちらから被告に対して確認事項(という体で、暗に被告の主張に対する批判をするもの)を3つ投げかけました。
その具体的な内容は、CALL4に掲載されている札幌の第9準備書面を確認していただければと思います。
https://www.call4.jp/file/pdf/202506/8bd0bb3898a07928489fb487d0f650c4.pdf
例えば、被告は「夫婦の氏に関する規定は、夫婦それぞれと等しく同じ氏を称する程のつながりを持った存在として嫡出子が意義づけられていること(同法790条1項)を反映していると考えられる」と主張していますが、「同じ氏を称する“程の”つながり」ってどういう趣旨??
いろいろな事情で別氏の夫婦の下で養育されている子どもは、親子のつながりが「劣っている」ということなの??
という確認をしました。
被告は、期日の場では回答できないとして、追って書面にて回答することになりました。
◆動き出す裁判長…
こちらからの確認が終わった後、守山裁判長から被告に対して確認するターンとなりました。いったいどのようなやり取りがあったのか──
次回のメルマガでその全貌をご紹介します。
お楽しみに!
弁護士 三浦徹也
※なお、期日報告会の動画はこちらで公開しています。
当日は機材トラブルで一部音声が同時配信できなかったため、字幕つきで編集しています。
ぜひご覧ください!
■ 札幌弁護士会主催 シンポジウムのご案内 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・・
7/5(土)シンポジウム「夫婦別姓も選べる社会へ『名前を変えたくない』は、ワガママですか?」
1996年に法制審議会が選択的夫婦別姓制度の導入を答申してから29年。
夫婦同姓を法律で義務付けている国は、世界中で日本だけになりました。
現在日本が取り入れている夫婦同姓制度は、憲法上の人権を侵害する重大な人権問題です。
各種世論調査でも選択的夫婦別姓の導入に賛同する意見が高い割合を占めています。
昨年、国連女性差別撤廃委員会は、日本政府に対し、女性が婚姻前の姓を維持できる法制度を整備するよう4度目の勧告を行い、日本経済団体連合会(経団連)は選択的夫婦別姓の導入を提言しました。
今こそ、夫婦別姓も選べる社会の実現に向けて、一緒に考えてみませんか?
日時:2025年7月5日(土)14時~16時30分 開場:13時30分
場所:北海道自治労会館4階ホール (札幌市北区北6条西7丁目5-3)
イベント概要 :パネルディスカッション
パネリスト:佐藤万奈氏・西清孝氏(第三次選択的夫婦別姓札幌訴訟原告)
恩地いづみ氏(第二次選択的夫婦別姓広島訴訟原告)
清末愛砂氏(憲法学者、室蘭工業大学大学院教授)
三浦徹也氏(弁護士、選択的夫婦別姓訴訟弁護団)
対象:どなたでも参加可能です
定員:150名
参加方法:事前申込不要
(1)会場参加 会場(北海道自治労会館4階ホール)へ直接お越しください。
(2)オンライン参加 以下のURLからご参加ください。
https://youtube.com/live/UF4IWE0Yf1M
■ 東京地裁・第5回期日のご案内 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・・
日時:2025年9月1日(月)11時~
場所:東京地方裁判所 103号法廷(大法廷)
https://www.courts.go.jp/tokyo/about/syozai/tokyotisai/index.html
☆12時から近隣の施設で期日報告会を行う予定です。
詳細が決まりましたらお知らせいたします。
☆第4回期日後の報告会動画はこちらにアップしています。
■ 札幌地裁・第4回期日のご案内 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・・
日時:2025年10月1日(水)11時~
場所:札幌地方裁判所 805号法廷(大法廷)
https://www.courts.go.jp/sapporo/about/syozai/sapporomain/index.html
☆期日終了後、期日報告会を行う予定です。
詳細が決まりましたらお知らせいたします。
■ 【締め切り延長中!!】
「あなたの陳述書、裁判所に届け!動かせ!目指せ一万通大作戦!」━━━━━━━━━・・・・・・
たくさんの陳述書をご提出いただき、ありがとうございます!
選択的夫婦別姓を求める声をもれなく裁判所に届けるため、締切を延長しました!
みなさまの生の声を引き続きお待ちしています!!
≪選択的夫婦別姓を求める陳述書 大募集!!≫
第3次選択的夫婦別姓訴訟弁護団では、選択的夫婦別姓を求めるみなさんからの声を裁判所に届けるため、陳述書を集めています。
「陳述書」と聞くとついハードルが高く感じてしまうのですが、日ごろの想いを自然体で書いていただいたものでまったくかまいません。
ぜひ書いてください。
一人ひとりの声は小さくとも、たくさん集まることで大波となり、裁判所を動かします!
動かすのはあなたです!
【対象者】 法律婚、事実婚、未婚を問わず、どなたでもご応募可能です!
【内容】 数行程度でもかまいません。最大4000字。
氏名は人格権であり、現在の民法が定める夫婦同氏強制制度は人権侵害!
たくさんの声を裁判所に届けましょう。
【詳細】 以下のサイトをご参照ください。
サイトリンクにあるフォームから直接応募可能です。

【締切】7月31日
【書き方のポイント】
日常的に不便である、困っているという説明だけでは、裁判官に事柄の深刻さ(人権問題であるということ)を分かってもらえない可能性があります。
裁判官は、この問題が人権問題であると認識すれば、憲法問題として考えてくれますが、困っているというだけでは対応してくれない可能性があるのです。
この問題が個人のアイデンティティや個人の尊厳の問題であること、つまり人権の問題であるということを、正面から書いていただければと思います。
また、「たまに」感じるだけでは、たいした喪失感ではないように裁判官に受け取られてしまう可能性があるので、役所、病院、銀行、子どもの学校、クレジットカード決済時、親族の集まり時などなど、戸籍姓での対応を迫られる場面は日常的に多々あり、
その度に、やるせなさや、やりきれなさだったり、不公平感だったり、諦めだったり、怒りだったり、絶望感だったり、色々な感情がわきあがり、それと日々なんとか折り合いをつけようとして生きている、でもつけられない、といったような、
アイデンティティの喪失感の日常性と、具体的にどんな感情が生じているのかが感じられるような記載があると伝わりやすいと思います。
さらに、例えば改姓による苦痛(職場で戸籍姓で呼ばれることによる苦痛)で心身のバランスを崩して職場も辞めたというような、喪失感の大きさが客観的にあらわれている記載も、分かりやすいのではないでしょうか。
このように、それが人権の問題であることを明示すると共に、ご自身の経験や思いについて、継続性・具体性・客観性があると、裁判官に人権の問題であることが伝わりやすいと思います。
【書き方の例】
陳述書例1(長いバージョン)
https://bessei.net/wp-content/uploads/2025/03/%E8%A8%98%E8%BC%89%E4%BE%8B1.pdf
陳述書例2(中間バージョン)
https://bessei.net/wp-content/uploads/2025/04/%E8%A8%98%E8%BC%89%E4%BE%8B2.pdf
陳述書例3(短いバージョン)
https://bessei.net/wp-content/uploads/2025/04/%E8%A8%98%E8%BC%89%E4%BE%8B3.pdf
※ご質問などありましたら、遠慮なくこちらまでメールください。
bessei2018@gmail.com
■ 支える会の連載公開中━━━━━━━━━━━━━━・・・・・・
別姓訴訟を支える会では「全国保険医団体連合会」が発行する「全国保険医新聞」という、主に医師・歯科医師向けの業界紙に連載を持っています。
原則、会員のみの限定公開なのですが、現在、連載部分を公開してくれていますので、ぜひご覧ください!!
サイト内最新号は、第1次選択的夫婦別姓訴訟原告で、別姓訴訟を支える会副代表の小国香織さん執筆「『わがままな妻』から『子どもがかわいそう』へ」です。
■ クラウドファンディングに引き続きご協力ください!! ━━━━━━━━━━・・・・・・
「夫婦別姓も選べる社会へ!訴訟」を支援するクラウドファンディングはおかげさまでファーストゴールを達成しました!
とはいえ、長い裁判期間、報告会の配信を継続し、イベント実施なども考え、セカンドゴールを設定しました。
セカンドゴールは1000万円です。
引き続きご協力いただければ幸いです。
訴訟中はいつでもご寄付いただけますので、よろしくお願いいたします。
https://www.call4.jp/info.php?type=items&id=I0000131