一般市民には、なかなか難しい裁判の流れ。ここでは、別姓訴訟弁護団事務局長 野口 敏彦弁護士に質問を投げかけてみました。読者の皆さんも、弁護士に尋ねてみたい質問がございましたら、是非、当サイトの投稿欄から質問を投稿してください。
最高裁大法廷に回付されたのは家事審判の方なんですよね?訴訟とどう違うんでしょうか?
この家事審判は,「夫の氏」と「妻の氏」の両方にチェックを入れた婚姻届の受理を求める裁判です。これは民法750条等の立法不作為による損害(慰謝料)の賠償を求める国家賠償請求訴訟とは異なり,もしこの審判の方で違憲という判断が出れば,最高裁は市長や区長に対し,「当該婚姻届を受理せよ」,という決定を下す可能性があります。その場合,民法750条等の法改正よりも早く,暫定的に「夫の氏」と「妻の氏」の両方にチェックを入れた婚姻届が受理されることになります。但し,それが最終的に戸籍にどのように記載されるか等については,やはり立法の手当てを待つ必要があります。
国賠請求本庁の事案が、3月末にようやく最高裁に届いたとのこと、これはどういう手続きですか?なぜこんなに時間がかかるのですか?
最高裁への上告を行うと、まず上告理由書等を定められた期限内に提出しますが、本件では広島の件は11月、東京の2件が12月末に提出しています。高裁はこれらの提出を待って、記録をチェックしたうえで、事件記録一式を最高裁に送ります。
記録を最高裁に送るだけでなぜこれほど時間がかかるのかというのは、確かに仰るとおりなのですが、一般の事件でも記録送付に結構時間がかかります。本件は記録が膨大だからかもしれません。裁判所内部の詳細な事情については、弁護団の方でも把握できている訳ではありません。
最高裁に出す書類が膨大だと聞きました。何をどのくらい出しているんですか?
最高裁には、上告理由書等の当方の主張を記載した書面と、それを裏付ける証拠書類を提出していますが、大法廷での審理となると、裁判官15名に加え調査官用の書類も提出する必要があるため、1つの事件のみで、1通の書面につき20通以上の写しを提出する必要があります。
そして、本件では、現行民法が成立した昭和22年以降の事情変更を詳細に主張しており、それを裏付けるものを中心に200通以上の証拠書類を提出しています。その結果、最高裁には膨大な量の書類が提出されることになります。※写真は膨大な書面の一部です。