☆別姓訴訟を支える会 メールマガジン☆第42号 2020年9月28日

みなさんこんにちは。別姓訴訟を支える会事務局です。
9月16日の広島高裁判決は残念な結果でしたが、評価できる点もありました。
今回は、弁護団、原告、参加者の三者の視点から執筆いただいた、渾身の3部作をお送りします。

◆ 今号の内容

・「国家賠償請求訴訟 広島高裁判決のご報告」 ~野口敏彦弁護士

・「第2次別姓訴訟広島高裁判決、国会に真摯な議論を求めました」~原告・恩地いづみさん

・「裁判所にもローカルルールがあるの?」~ライター・和久井香菜子さん

・訴訟最新情報

■ 国家賠償請求訴訟 広島高裁判決のご報告 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・・

みなさん、こんにちは。
今日は、9月16日午後2時に広島高裁において言い渡された判決の内容について、簡単にご説明させて頂きます。
結論は控訴棄却でしたが、良かった点もいくつかある判決でした。

今回の判決の主な特徴として、

(1)婚姻の際に夫婦が称する氏について合意をすることは「婚姻の要件」になっていると認めた

(2)憲法14条論と24条論を1つの論点として、いずれも事情変更論の枠組みで検討すると共に、選択的夫婦別氏制度を導入するに当たっては、子の氏の問題等多方面にわたる慎重な検討が必要である等として、違憲判断を回避した

(3)「法的な裏付けのない通称使用には限界があるといわざるを得ない」と明言した

(4)多数の地方議会からの意見書の提出や女子差別撤廃委員会からの度重なる勧告等は「重く受け止めるべき」であり、国会は選択的夫婦別氏制度の導入を切実に求めている人々の声にも「謙虚に耳を傾け」、「真摯な議論を行うことが期待されている」と述べた

点が挙げられます。

まず上記(1)については、平成27年最高裁判決のロジックによると、夫婦同氏は「婚姻の効力」であるため、婚姻についての「直接の制約ではない」(≒「法律上婚姻はできる」)ものの(この点が完全に詭弁なのですが…)、別氏婚を望む者は「同氏にする義務を果たせない」ため、そのことが婚姻に対する「事実上の制約になっている」とされていたのですが、今回の判決では夫婦同氏は「婚姻の要件」と明示されましたので、別氏婚を望む者は「法律上婚姻できない」ことが明らかにされました。
平成27年最高裁判決の詭弁が1つ解消されたのは、一歩前進と言って良いと思います。

他方で、同氏婚を望むあるいは受け入れられる者は結婚できて、別氏婚を望む者(別氏のまま結婚したいという「信条」を有する者)は結婚できないのですから、論理的に14条論を突き詰めればそこに差別(憲法14条違反)があるのは明らかなはずなのですが、今回の判決は上記(2)のとおり憲法14条の論点に正面から向き合うことを避け、全てを「かつては合憲だった夫婦同氏制が、事情の変化に伴い違憲になっているか否か」という判断に切り替えた上で、子の氏の問題等については多方面にわたる慎重な検討が必要である等として、違憲判断を回避しました。

最終的に国会における精緻な制度設計が必要となることは当然であり、原告(控訴人)も本件訴訟においてそこまでの判断は求めていません(その判断は、司法ではできません)。
原告(控訴人)が求めているのは「現行の夫婦同氏制が違憲である」というただ1点の判断であり、その一言があれば国会は当然動き出すのですが、今回も広島高裁はその判断に踏み込みませんでした。

上記(3)は、今回の判決において最も評価できる点かもしれません。
昨年11月の住民票等への旧姓併記制度の開始以降、弁護団において手分けをして、制度の運用状況(旧姓で銀行口座が開設できるか、不動産登記ができるか、クレジットカードが作れるか等)に関する調査を行い、その結果を多数の調査報告書の形で提出したところ、上記のとおり「通称使用には限界がある」旨を明言してもらえました。

平成27年最高裁判決が最終的に夫婦同氏制を合憲とした拠り所が、この通称使用による不利益の緩和という点でしたので、そこに限界があると認定されたことは、次の最高裁の判断に少なからず影響があるのではないかと考えています。

最後に上記(4)についてですが、個人的な印象としては、本件の裁判官は本音としては違憲判断を下したかったものの、そうすると諸方面への影響が大きすぎるため、敢えて争点をぼかし、このような政治的な事柄は国会で審議して決めてくれという形で判断を回避したというところが実情なのではないかと感じました。
違憲な法令を違憲だと言うのが裁判所の職責である以上、このような裁判所の態度は極めて問題なのですが、暗黙の掟の中で縛られている現場の裁判官の心情を察すると、最大限当方に有利な形で最高裁への橋渡しをしようとしてくれたのかもしれないと、そんな気もしています。

いずれにせよ、国賠訴訟もいよいよ最高裁に向かいます。
弁護団では現在この判決を再度分析し直しており、最高裁に向けどのような主張を行うか、改めて議論を開始しています。
来月には、東京高裁の判決も2件連続で下されますし、別姓に対する注目度はますます高まっていくのではないかと思います。
それにより別姓賛成の声が高まれば、それがまた1つの「事情変更」を構成しますので、判決が出るまでにそのような好循環が形成されていることを強く期待しています。
本件は、支援者の皆さんの声がストレートに裁判における力に変わりますので、是非来るべき最高裁の判決まで、力をお貸し頂ければと思います。

引き続きよろしくお願いいたします!

弁護士 野口敏彦

■ 第2次別姓訴訟広島高裁判決、国会に真摯な議論を求めました ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・・

第2次別姓訴訟、先日9月16日に広島高裁の判決言い渡しがあり、広島での裁判は区切りがつきました。
主文のみの言い渡しのあっけないこと!!
起立、礼。でいつものように始まった期日。

「言い渡しをします。主文、本件控訴を棄却する。控訴費用は、控訴人の負担とする。以上」でした。

せっかく、前回の意見陳述で一生懸命自己開示をし理解を求めて始まった交際、じゃなくて高裁。
広島最後なんだし、せめて、判決理由の「肝はこれやで」くらいはサービスで読んでくれてもいいのに、などなど思いましたが。
裁判官の表情も何も見る間もなく終了でした。

昨年地裁の判決後に弁護団の皆さんが報告会記者会見に向けて判決文を読まれている中で、榊原団長が「良いこと探しをしましょう!」と言われて、
「ん???」と思ったのですが、よいこと、よい言葉を判決の中に見いだすことができれば、前進に繋がる。
ここまできてやっとわかりました。
気付き、遅すぎっ、です。すみません。

広島高裁の判決には、通称の限界、女性差別撤廃委員会勧告、「国会には真摯な議論が求められていること」がきちんと書きこまれていました。
国会が動かない言い訳に「違憲判決は出なかった」という2015年の最高裁判決が使われているようにみえます。
裁判所が「国会動け!」をはっきり言っていることをもっとしっかりアピールすれば言い訳を封じることができるかもしれない、と今回記者会見ではそこのところを集中して話しました。数社は見出しに入れてくれていました。
これは、これからも気をつけていこうと思いました。

せっかく原告として参加している裁判。
あたり前っちゃあたり前ですが、原告の言葉はメディアで取り上げられるのです。
今回は、私の、私たちの、現状を前に進めたいという思いを乗せられる言葉を判決に探して発信して、メディアに載せたいと思いました。
原告ができることはその言葉を伝える媒体になることかもしれません。
「よいこと探し」で見つけたプラスの言葉をできるだけ広めていきたいと思っています。
裁判でも、議員さんへの働きかけも、そうした行動を取り上げてもらうメディア取材にも、いろんなところで「よい言葉、前に進める言葉」をアピールしていければと。
弁護団長の姿勢はきっとそういうことなのだと、やっと今頃分かってきました。

東京からずっと通ってくださった野口弁護士はじめ弁護団の皆さま、最強の書面を作成してくださり裁判に関わる事務手続をさくさくこなしてくださった榊原弁護団長、早坂、飯岡両弁護士はじめ東京と広島の弁護団の皆さま、裁判の進行を支えてくださった広島の@広島応援団のみんなと東京の支える会の皆さま、遠くから近くから傍聴に駆けつけてくださったり、応援のエールを送ってくださった皆さま、応援を込めて記事にしてくださったメディアの皆さま、ここまでありがとうございました。
まだ、続きます。
広島からは最高裁に気持ちを向けています。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。

原告 恩地いづみ

*期日後の記事を共有します。ウェブ上に掲載されている記事はリンクをつけています。

中国新聞 紙面 2020/9/17
別姓禁止「合憲」を支持 広島高裁控訴棄却 国会に注文も

朝日新聞 紙面 2020/9/17
夫婦別姓訴訟「旧姓通称使用に限界」 弁護団、高裁の指摘評価

新聞赤旗 web
訴え棄却「国会議論期待」選択的夫婦別姓判決 原告上告へ
広島高裁
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-09-17/2020091714_01_1.html

毎日新聞 web
夫婦別姓訴訟、原告の控訴棄却 広島高裁が合憲判断の1審判決支持
毎日新聞2020年9月16日
https://mainichi.jp/articles/20200916/k00/00m/040/213000c

広島homeTV
夫婦別姓訴訟 控訴棄却 広島高裁
2020.09.16 19:05
https://www.home-tv.co.jp/news/content/?news_id=20200916065233

弁護士ドットコムニュース web
2020年09月16日 17時19分
第二次夫婦別姓訴訟、広島高裁も請求棄却…「国会は謙虚に耳を傾け、真摯な議論を」と言及
https://www.bengo4.com/c_23/n_11744/

ブログ 新・ヒロシマの心を世界に
「第2次別姓訴訟広島高裁判決言い渡し」傍聴記 2020年9月17日 (木)
http://kokoro2016.cocolog-nifty.com/shinkokoro/2020/09/post-143e9f.html

■ 裁判所にもローカルルールがあるの? ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・・

9月16日の広島高裁判決、東京から向かうことにしました。
傍聴席が少なかったため、記者席を押さえられないかと小汚いことを考えついてしまった。

原告の恩地さんに聞いてみたら、地元の記者さんに取材の申請方法を聞いてくださいました。
それによると裁判所に電話すればよいとのことだったのでかけてみたんです。
担当の方に繋いでもらい、
「裁判の傍聴をしたいんですが、9月16日……」
と、期日を全部言い終わらないうちに、「ああ、あれの」みたいな反応でした。
名前と媒体名、編集部の連絡先を言って身分証明をすればいいそうなのですが、電話をしたのが9月15日。
直前すぎた上に取材席が埋まっていたため、申し訳なさそうにお断りの電話がかかってきました。

当日の抽選で、9席を争ってくじを引いたのは15名。
自分が引いた抽選の棒には何の印もなく、まんまとハズレでした。
ジャニーズのコンサートだと、居住地から遠い地のチケットは当選しやすいのですが、傍聴席もそのくらい配慮してくれればいいのに!

抽選直後は軽く発狂しましたが、その後の交流会はお料理も美味しかったしお話もめちゃくちゃ面白かったし、
宝塚の男役のようにかっこいい川尻弁護士とお話できてとても嬉しかったです。

とはいえ広島の悪夢はもう見たくないので、東京高裁に電話をしました。
そうしたら「事件番号と原告の名前」が必要とのことです。
わからんと言うと、「ゲンシンの裁判所、ゲンシンの事件番号、当事者名、ゲンシンの判決日、高裁への記録送付日」がわかれば調べられる、というのですが、そんなものもっとわかりません。
あれこれ検索してもわからず、支える会の方にもいろいろ聞いていただき、なんだか大ごとになってしまって申し訳ないです。

同じ高裁でもまったく手続きの方法が違うのですね。
10月の判決は一般人として傍聴します。当たりますように。

そうそう、広島の判決後に行われた会見は、判決や裁判所そのもののなにが問題なのかを弁護団の先生達が詳しく説明してくださり、非常に勉強になりました。
ダイジェストを記事にすることにしたので、公開されましたら読んでいただけると嬉しいです。

編集・ライター、合同会社ブラインドライターズ代表 和久井香菜子

■ 訴訟最新情報 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・・

10/20(火)国賠請求訴訟(原審・東京本庁)高裁判決

◆場所:東京高裁 101号法廷
◆時間:13:30~

*15時から記者会見を予定しています。

10/21(水)夫婦別姓確認訴訟

◆場所:東京地裁 522号法廷
◆時間:14:00~

10/23(金)国賠請求訴訟(原審・立川支部)高裁判決

◆場所:東京高裁 101号法廷
◆時間:13:30~

*15時から記者会見を予定しています。
*16時頃から報告集会を予定しております。詳細は追ってご連絡いたします。

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