☆別姓訴訟を支える会 メールマガジン☆第43号 2020年10月29日

みなさんこんにちは。別姓訴訟を支える会事務局です。

先週は高裁判決と確認訴訟期日が続き、弁護団も支援者も怒涛の1週間でしたね。
今号では10月20日の判決と21日の審理の報告、次号では23日の判決報告をお伝えします。

◆ 今号の内容

・「国家賠償請求訴訟(原審・東京本庁)高裁判決のご報告」 ~寺原真希子弁護士

・「夫婦別姓確認訴訟 第9回審理のご報告」~竹下博將弁護士

・訴訟最新情報

国家賠償請求訴訟(原審・東京本庁)高裁判決のご報告

国家賠償請求事件(東京本庁分)について、10月20日、東京高等裁判所は、請求を棄却し、夫婦同氏制は、憲法にも条約にも違反しないとの判断を下しました。
その理由の概要は、以下のとおりです。

1.憲法14条違反の主張について

民法750条は、婚姻の効力の一つとして夫婦同氏を定めたものであり、婚姻について直接の制約を定めたものではなく、
いずれの氏を称するかの選択について一律に協議に委ねるものであるから、信条の違いに着目した法的な差別的取り扱いを定めたものとはいえない。

2.憲法24条違反の主張について

婚姻に伴い氏を改めることにより不利益を被る者が増加している一方で、氏には家族の呼称としての意義があること等からすれば、
直ちに合理性を欠く制度ではあるとは認められない。
通称使用が不利益を緩和するものとして不十分であるとしても、直ちに上記判断を左右するとはいえない。

3.平成27年最高裁判決以降の事情変更について

選択的夫婦別氏制度への賛成割合が増加傾向にある等という社会状況の変化は、平成27年最高裁判決以降の前から徐々に進行し、その後も引き続き拡大しているが、
判例変更を正当化しうるほどの変化があるとまでは認められない。

4.条約違反の主張について

女性差別撤廃条約は、締結国がその権利の実現に向けた積極的施策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものであって、
個々の国民に権利を保障するものとして裁判規範性を有するものではない。
また、自由権規約においても、婚姻前の氏の使用を保持する権利が保護されていることが具体的に定められているとは言い難い。

今回の高裁判決は、そのほとんどの部分が、平成27年最高裁判決を安易に引用することによって構成されており、残念ながら、
以下に記載する今回の訴訟の特徴(本質)を直視しないものでした。

(1)今回の訴訟では、民法750条に加えて戸籍法74条1号も審理対象とすることにより、夫婦同氏が婚姻の「効力」ではなく「要件」であること、
つまり、夫婦同氏制が婚姻を「事実上」ではなく「法律上直接的に」制約していることを明確に主張していること

(2)平成27年最高裁判決の事案では主張していなかった、新たな主張(信条に基づく夫婦別氏希望者に対する差別的取扱い)が加わっていること

最高裁判所における上告審では、上記を改めて強調することにより、平成27年最高裁判決をなぞるだけでは審理をしたことにならないことを指摘した上で、
平成27年最高裁判決以降にとどまらず、夫婦同氏制を定める民法750条が制定された1947年(昭和22年)以降の社会の変化を具体的なデータとともに主張していくことで、
あるべき判断へと最高裁判所を導いていきたいと思います。

第一次訴訟、第二次訴訟と、これまでも全力を注いできましたが、今回の上告理由書の作成に更に力の限りを尽くすつもりです。
引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。

弁護士 寺原真希子

夫婦別姓確認訴訟 第9回審理のご報告

夫婦別姓確認訴訟について、10月21日、9回目の審理(口頭弁論期日)が東京地裁で開かれました。
なお、本期日から裁判長及び左陪席裁判官(向かって右の裁判官)が交代しました。

被告・国は、準備書面(9)及び(10)を提出し、以下の点について主張を補充しました。

(1)「夫婦が称する氏」について合意しなければ婚姻は成立しない(「夫婦が称する氏」についての合意が婚姻の実質的成立要件である)こと

(2)「夫婦が称する氏」について合意しないまま婚姻できるとしても、そのような婚姻は民法が想定していないので、戸籍には記載できないこと

(3)婚姻関係の証明を受ける地位について確認を求める訴えは手段として不適切である(不適法である)こと

これに対し、弁護団は第9準備書面を提出し、以下のとおり反論しました。

(1)「夫婦が称する氏」について合意することは、婚姻の実質的成立要件ではない。
別姓訴訟大法廷判決(平成27年12月16日)は、このように説示していると解されるし、被告・国も、別件訴訟では、
「夫婦が称する氏」について合意することは婚姻の成立要件ではないと主張している。

(2)「夫婦が称する氏」について合意していない婚姻についても、戸籍に記載できる。
例えば、離婚した後に再婚したが、離婚無効判決が確定した場合、再婚者が再婚によって氏を変更していれば、前婚配偶者と再婚者は氏が異なることになるものの、
婚姻関係にはある。この場合の前婚の婚姻関係についても戸籍には記載され、身分関係が正確に反映されてきた。

(3)「夫婦が称する氏」について合意しないまま婚姻することができるかどうかは、訴訟という形で公開の法廷で審理されるべきであるし、
婚姻関係を証明するためにどのような制度とすべきか(戸籍をどのように編製・記載するか)は、被告・国において検討すべきことであるから、
婚姻関係の証明を受ける地位について確認を求める訴えこそが適切な手段である。

被告・国は、弁護団から提出した第9準備書面について反論する予定ですが、裁判長は、双方における主張立証が概ね尽きつつあると考え、また、双方の意見を踏まえ、
必ずしも尋問までは必要ないとして、来年1月27日(水)午前11時30分(522号法廷)から開かれる次回期日をもって審理を終結することもありうると述べました。

なお、裁判長は、婚姻関係を証明する手段として戸籍による場合だけでなく、戸籍によらない場合も想定するのであれば、
その方法を具体的に説明するよう弁護団に促しましたので、この点は、弁護団において早期に対応します。

次回期日で審理が終結すれば、来年の春には判決が言い渡されると思われます。
交代した裁判長も明瞭に訴訟指揮をして審理を進めていますので、判決前の最後の審理となるかもしれない次回期日を傍聴して応援お願いいたします。

弁護士 竹下博將

訴訟最新情報

1/27(水)夫婦別姓確認訴訟

◆場所:東京地裁 522号法廷
◆時間:11:30~

担当者より

10/20傍聴に行きました、上田です。
裁判長が読み上げる判決要旨を聞きながら、むむむ!これは2015年の判決と大差ないじゃないか!と素人の私でもわかりました。
法律論云々よりも、本人の主観で棄却ありきだったのではないかと思わずにはいられません。
裁判官3人は50代と思しき男性ばかり。
改姓がどれほど苦痛なことなのか、イメージがわかないんでしょうね。悔しいです。

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