みなさんこんにちは。別姓訴訟を支える会事務局です。
引き続き、6月23日に出された最高裁大法廷の決定について、別姓訴訟を支える会関係者全員のコメントを掲載します。
今号は弁護団より、芹澤真澄さん、塩生朋子さんのコメントをご紹介します
歩みを止めずに
民法750条と戸籍法74条1号をめぐる立法当時(1947年)からの事情の変化を主張立証することにチームで取り組みました。立法の背景となった事情の変更が法律の違憲判断を導き出す鍵になりうるからです。大きな4つの柱は,社会の変化,国民の意識の変化,女性差別撤廃委員会の勧告,法改正を求める地方議会の動きです。
社会の変化として,
(1)女性の有業率の上昇
(2)共働き世帯の割合増加
(3)結婚・出産・育児後も就業を継続する女性の増加
(4)女性管理職の割合の増加
(5)晩婚化現象
(6)女性のM字カーブの変化
(7)離婚と婚氏続称の割合増加
(8)再婚割合の増加
(9)グローバル化,IT化,勤務形態の変化
等の観点から統計値をもちいて主張しました。
国民の意識の変化として,
(1)選択的夫婦別氏制度の導入についての考え方の変化(内閣府の世論調査と民間の世論調査の結果)
(2)家族の一体感と氏の関係に関する意識の変化
(3)女性と仕事に関する意識の変化
をとりあげて主張立証をしました。
夫婦別氏は社会的要請となりつつあり,希望者が増加していること,選択的夫婦別氏制に賛成する意見が増加し続けていること等が客観的に裏づけられ,地方議会で採択された選択的夫婦別氏制度の導入を求める趣旨の意見書の増加などをみても,特に2015年最高裁判決(「前判決」)後の変化は顕著です。
6月23日の最高裁決定の多数意見は,処分の時点(2018年2月頃)において,と述べて事情変更を処分時までに限定していると言われることもありますが,憲法24条の違憲性の判断において総合考量する事情には予測できる近未来の事情(処分時以降に実際に生じた事実は当然)も含まれるべきです。
夫婦同氏を強制する民法750条と戸籍法74条1号の合理性は,すでに失われているにもかかわらず,前判決の判断を変更すべきものとは認められないと多数意見及び補足意見が結論づけたことは非常に残念です。
しかし,社会や国民の意識の変化は続いており,選択的夫婦別氏制度は実現すると思います。
1996年から25年もの時間が経過し,少なからぬ人が心から待ち望んでいる選択的夫婦別氏制度。
すみやかな実現のためには歩みを止めないことが大事であり,これからも取り組んでいきたいと思います。
弁護士 芹澤 真澄
違憲と条約違反の判断を求めて
第二次別姓訴訟では、民法750条と戸籍法74条1号があいまって夫婦同氏が婚姻の要件となっていることを明示して憲法違反であると主張しましたが、多数意見はその点を直視せず、補足意見も間接的な制約にすぎないとして重視しなかったことはとても残念でした。
また、結論は違憲と合憲のどちらもあり得ると思ってはいましたが、まさか憲法14条違反の主張に対して最高裁の判断が示されないとは思いもかけず、理由を明示して欲しかったという思いで一杯です。
条約違反の主張に対しても、第一次別姓訴訟と同様に「単なる法令違反を主張するもの・・・であって、特別抗告の事由に該当しない」との一文のみで済ませていることも残念でなりません。
ただ、三浦意見では、女性差別撤廃条約の採択、批准、一般勧告、定期報告における勧告、同条約加盟国で夫婦同氏を義務付けているのは日本のみであるといった国際的規範に関する状況について、人権の普遍性及び憲法98条の趣旨に照らして考慮する必要があるとし、他の事情と合わせ考慮して、夫婦同氏制は憲法24条に違反するとしました。
また、宮崎・宇賀反対意見では、女性差別撤廃条約2条、16条1項に締約国(個々の国民に対してではなく、国家機関たる行政府・立法府・司法府)に対する法的拘束力があることを前提に、同条約16条1項にいう夫婦の平等や夫婦それぞれの個人的権利の確保と、憲法13条、14条、24条2項において基礎とされている人権尊重と平等原則という国際的に普遍性のある理念は本質において趣旨を同じくすると述べて、女性差別撤廃委員会からの3度目の正式勧告を受けた事実は夫婦同氏制が憲法24条2項違反とする理由の一つとなるとしました。どちらも、憲法24条の解釈において条約を検討していますが、人権の普遍性に言及した点に共感しました。
今後、自由権規約委員会の定期報告においても民法改正の勧告が出されれば追い風になると思います。国会が夫婦別姓を認める民法改正を行うことが最終的な目標ですが、私は夫婦同氏制が多数決の問題(民主主義)ではなく、人権の問題(自由主義)であると確信しているので、裁判所が正面から人権問題として扱って違憲判断を出すことを求めて、これからも別姓訴訟を続けていきたいと思います。その時には、条約についても、憲法解釈の中で検討するだけではなく、端的に条約違反との判断を示してくれることを願っています。
弁護士 塩生 朋子
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