☆別姓訴訟を支える会 メールマガジン☆第58号  2021年7月28日

メールマガジン

みなさんこんにちは。別姓訴訟を支える会事務局です。

第56号に引き続き、6月23日に出された最高裁大法廷の決定について、別姓訴訟を支える会関係者全員のコメントを掲載します。今号は弁護団より、川尻恵理子さん、寺原真希子さん、早坂由起子さんのコメントをご紹介します

4筋の強く明るい光

法学の勉強を始めると、最初に教わることが、「自由主義」と「民主主義」の話です。

「民主主義」は、民意の反映を旨とする大切な制度ですが、多数決で物事が決められるため、「多数者による専制」となり、49%の人たちの人権が侵害されるおそれが常に存在します。そこで、もう一つの柱となる制度が「自由主義」です。個人の尊厳を旨として、個々人の自由や権利を守ることを目的とします。

この「自由主義」と「民主主義」は、いずれも大切な社会の基本的構成要素です。どちらが上、という関係にはありません。どちらも等しく社会を支えています。

そして、裁判所の最も大切な使命の一つは、憲法の番人として、人々の自由や権利、とりわけ多数決で決められる民主主義的プロセスでは救済されることのない少数者の自由や権利を、守ることです。すなわち、「自由主義」に基づく人権の擁護と尊重こそが、裁判所の役割なのです。

ところが、今回の最高裁多数意見には、個人の尊厳や人権の尊重、とりわけ少数者の権利の擁護という基本的な考え方が、見事に欠落しています。

日本の最高裁判所は、裁判所の最も大切な使命を、放棄したといわざるを得ません。

しかしながら、この決定には、4つの強い光が宿っています。三浦守裁判官、宮崎裕子裁判官、宇賀克也裁判官、草野耕一裁判官が、夫婦同氏を強制する現行制度は、憲法24条に違反すると判断しました。

今回の大法廷決定は、この意見と反対意見のために出されたと言っても、過言ではないでしょう。

そこには、「個人の尊厳」と「両性の本質的平等」という言葉が、何度も出てきます。これこそが、憲法が基本理念とする、最も重要な概念です。そして、本件も、ここから考えていくべきものなのです。

4名の裁判官は、本件は民主主義的なプロセスに委ねるべき問題ではないと断じた上で、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚し、氏名が人格権の一内容であることや、婚姻における当事者の自律的ないし自由かつ平等な意思決定を不合理に制約することは許されないこと、選択的夫婦別姓制度を導入しないことは、余りにも個人の尊厳をないがしろにする所為であり、もはや国会の立法裁量を超えるほどに合理性を欠いていることなどを、丁寧に論じており、現行制度は憲法24条に違反すると、力強く結論づけています。

後世に残るのは、この4名の裁判官の見解です。

私たちは、この見解を道標として、先に進んでいきます。

弁護士 川尻 恵理子

司法を諦めない

長い間国会によって放置されてきた夫婦同氏強制制度について、またもや国会にボールを投げることにより自らの責務を放棄した最高裁への失望の大きさは、言葉で言い尽くすことができません。

が、それでも私は、自分自身に言い聞かせる意味でも、あえて強く言いたい、「司法を諦めない」と。

私は、「少数者の人権の最後の砦」と言われる司法の存在意義に共感して弁護士になりました。司法を諦めるということは、自分自身が弁護士であることの前提を疑うことであり、個々人の人権を尊重するという憲法の理念自体を疑うことです。

憲法76条は、裁判官が「良心」に従ってその職務を全うすべきことを定めていますが、憲法学者である木村草太東京都立大学教授は、その著書の中で、次のように述べられています。

「裁判官が従うべき『良心』は、事実や法内容の認識の不一致があったことが不思議に思えるくらい『法的判断として自然で妥当』と思えるような判断を創造しろ、という規範」
「『良い裁判』がでると、それ自体が当事者や社会の人々の認識枠組みを変革してしまい、認識の不一致なんてなかったような気になる」
「伝統的家族観が崩壊する」「家族の一体感が失われる」などという不毛な議論が一瞬で消えさるような、「自然で妥当」な法的判断を最高裁が下す道筋をつけることが、私達弁護団の役割だと考えます。

憲法が求める司法の責務を最高裁に全うさせるべく、選択的夫婦別姓を勝ち取るその最後の瞬間まで、全力で闘い抜きたいと思います。

弁護士 寺原 真希子

この決定は通過点

今回の決定は、率直に、とてもとても残念でした。自分たちの主張が認められなかったことはもちろん、最高裁が私たちの憲法の議論に正面から応えてくれなかったこと、司法の役割を放棄したことが情けなく、残念でした。ただ、2015年判決のときに比べ、確実に状況は変わっています。

2015年判決は、結論は負けてしまったけれど、判決の直前はたくさんの報道が出て、議論が巻き起こりました。第二次訴訟をはじめるとき、一度、負けているこの裁判をどう闘うか、議論を重ねました。一番は、「この議論の火を絶やさないように」、「変わるまで闘い続ける」という意思を表明するため、ということで、再び立ち上がりました。

その目的は、はっきり言って、達成できたと思っています。2018年には、私たちが提起した裁判だけではなく、複数の選択的夫婦別姓を求める裁判が提起されました。そして、全国陳情アクションをはじめとする、選択的夫婦別姓を求める方たちの活動にも、たくさん勇気づけられました。さらに、新聞だけではなく、雑誌、ネット記事など、別姓に関する記事を目にする機会が各段に増え、たくさんの方が問題意識を持って、この問題を議論する状況が醸成されたと感じています。そして、ほとんどの記事が、「選択肢を増やす」ということに好意的な内容でした。

法制度を問う訴訟において、司法には、本当に厚い厚い壁があります。でも、私たちの目的は、裁判に勝つことそのものではなく、どのようにして、法制度を変えていくか、だと思っています。その一つとして、今回の裁判は、大きな役割を果たしたと感じています。貴重な違憲の少数意見を引き出したことも、一つの成果です。今回の結論で、全てが終わったわけではなく、これも一つの通過点だと思っています。国賠訴訟の結論もまだ出ていませんし、2021年6月23日のこの決定を通過点として、引き続き、自分らしく生きられる社会の実現を目指して、自分にできることをやっていこう、と決意を新たにしています。がんばりましょう!

弁護士 早坂 由起子

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